تسجيل الدخولそう聞かれて、もう美衣子とはやっていけない。
離婚の方向で考えるしかない! それに、もしも蓮斗がMという奴の子どもだとしたら、俺は、蓮斗と離れ離れになってしまう。 そもそも親権は、母親の方が取れる確率が高い。 ましてや、俺とは血が繋がっていないとなると、美衣子が働いて蓮斗を育てる事が可能だ。 放棄するなど、よっぽどのことがない限り、俺が育てられる可能性は、低いのだろう。 俺は、騙されたことと、蓮斗と離れなければならないこと、両方の悲しみで涙を堪え切れなかった。 悔しさから滅多に涙など流さない俺は、布団の中で1人、声を殺して男泣きをした。 ──どうして、気づかなかったのだろう どうして、見抜けなかったのだろう…… そして……ふと思った。 蓮斗は、3歳。 俺たちは同棲して、半年で妊娠が発覚し籍を入れた。 と言うことは、美衣子は、少なくともその頃からMという男と会っていた。 俺と同時期に会っていたのか? 俺は、それを知らずに、何の疑いもなく自分の子だと信じて籍を入れてしまったのか…… 疑う余地などなかった。 この父親と見られるMと美衣子は、以前も付き合っていたのか? なぜ結婚しなかったのだ? あれこれ、確認したいことが山積みだ。 その前に、俺はまずDNA鑑定をすることにした。 そして、土曜日は、蓮斗を実家に預け、高橋と共に現場を押さえに行くことを決意した。 もう終わりだ…… ──水曜日の朝 結局、一睡も出来なかった。 美衣子と顔を合わせることなく、俺は早めに家を出た。 後3日も、何も言えずに、美衣子と顔を合わせるのは辛い。 もちろん蓮斗には、会いたい! でも……もし俺の子じゃなかったら…… そう考えると、内臓をそして……高橋が、 『それと……』と言いにくそうに、ボソッと言った。 思ったより早くDNA鑑定の結果が届いたのだと言う。 こちらに送られても困るので、宛先を高橋の事務所にしておいた。 「おお、どうだった?」 『やっぱり、お前の子じゃなかった』と言われた。 「……」 覚悟をしていたとは言え、やはりズシーンと重く辛い結果だ。今の俺には、1番堪える……。 鼻の奥がツーンとして、やはり、堪え切れずに涙が溢れ落ちた。 「そうか……」 俺は、電話口で絞り出すように、そう返すのが精一杯だった。 あんなに可愛がって育ててきた息子が、俺の子じゃない! 突然そう言われて、胸が苦しくてカラダをバラバラに引き裂かれる思いだ。 この気持ちが、アイツらには分からないのか……。 『とりあえず今日は、ゆっくり休めよ。何かあったら、いつでも掛けて来い! また明日連絡する』 「おお、悪りぃな」 『いや、じゃあ、又明日』 「おお」
──翌朝、木曜日 「じゃあ行って来る」 「行ってらっしゃーい」と変わらず明るく言う美衣子に一瞬だけ目を合わせた。 いつもと変わらない笑顔だ。 ──俺に見せる笑顔はコレが最後になるかもしれないな そして、 「バイバイ」と手を振る蓮斗とハイタッチをして、 小さなスーツケース1つで玄関を出た。 1日分の着替えしか入っていない。 会社の最寄り駅まで行って、ダミーのスーツケースをロッカーに預け、いつも通り会社へと向かう。 高橋とは密に連絡を取っている。 〈今、家を出た〉 〈了解〉 〈後は頼んだ〉 〈任せろ〉 今日は、高橋に美衣子の調査に入ってもらう為だ。 俺は、いつも通り仕事を熟す。 仕事中には、考えたくない案件だから。 今日は、Rとの証拠が撮れるだろう。 そして、明後日が運命の日となるだろう! なんとも言えない感情だ。 俺は、夕方まで夢中で仕事を熟した。 I
そして、きっと風呂に入っている間に、男と連絡を取るはずだ。それは、恐らくRというパパ活男だろう。 高橋に借りた小型カメラは、すぐには設置出来ない。 しかし、俺は風呂に入る前、咄嗟にリビングの隅に置いた鞄の中で、自分のスマホの録音ボタンを押しておいた。 美衣子とRとのメッセージの記録を写真に撮った時、電話をかけた形跡を発見したからだ。 メッセージを送るより電話をかけて説明した方が早いからだろう。 そして、蓮斗と楽しいお風呂時間を過ごして、先に蓮斗を上がらせようと風呂のドアを開けた時、慌ててスマホをテーブルの上に置いた美衣子を確認した。 ──やっぱり…… それから、1人で風呂の中でボーっと想いにふけ、ゆっくり上がった。 蓮斗は、美衣子が髪を乾かし、着替えているのを見ているようだ。 もう3歳だから、随分自分で出来る事が増えて来た。 風呂から上がると、俺はようやく晩ご飯にあり付けた。忙しかったと言うだけあって、スーパーで買ったお惣菜だということは、一目瞭然だ。 それでも、今は、美衣子以外の人が作った物だからと、有り難く口に放り込む。 「パパ、おやすみ」 「おお、蓮斗おやすみ〜」 今まで当たり前に聞いていたパパと言う呼び名。今は、妙に突き刺さる。 そのまま美衣子が寝かしつけに行った。
そう聞かれて、もう美衣子とはやっていけない。 離婚の方向で考えるしかない! それに、もしも蓮斗がMという奴の子どもだとしたら、俺は、蓮斗と離れ離れになってしまう。 そもそも親権は、母親の方が取れる確率が高い。 ましてや、俺とは血が繋がっていないとなると、美衣子が働いて蓮斗を育てる事が可能だ。 放棄するなど、よっぽどのことがない限り、俺が育てられる可能性は、低いのだろう。 俺は、騙されたことと、蓮斗と離れなければならないこと、両方の悲しみで涙を堪え切れなかった。 悔しさから滅多に涙など流さない俺は、布団の中で1人、声を殺して男泣きをした。 ──どうして、気づかなかったのだろう どうして、見抜けなかったのだろう…… そして……ふと思った。 蓮斗は、3歳。 俺たちは同棲して、半年で妊娠が発覚し籍を入れた。 と言うことは、美衣子は、少なくともその頃からMという男と会っていた。 俺と同時期に会っていたのか? 俺は、それを知らずに、何の疑いもなく自分の子だと信じて籍を入れてしまったのか…… 疑う余地などなかった。 この父親と見られるMと美衣子は、以前も付き合っていたのか? なぜ結婚しなかったのだ? あれこれ、確認したいことが山積みだ。 その前に、俺はまずDNA鑑定をすることにした。 そして、土曜日は、蓮斗を実家に預け、高橋と共に現場を押さえに行くことを決意した。 もう終わりだ…… ──水曜日の朝 結局、一睡も出来なかった。 美衣子と顔を合わせることなく、俺は早めに家を出た。 後3日も、何も言えずに、美衣子と顔を合わせるのは辛い。 もちろん蓮斗には、会いたい! でも……もし俺の子じゃなかったら…… そう考えると、内臓を抉られるほど、堪らなく悲しくて辛い。 すぐに、蓮斗の歯ブラシと俺の歯ブラシをDNA鑑定に提出した。 急ぎで出したので、ちょうど週末には、結果が出るだろう。 仕事終わりに、とりあえず、高橋に会いに行くことにした。 「久しぶり! 大丈夫?……じゃないよなあ」 と言う高橋。 「すまないな、久しぶりに会うのに、こんな依頼」 「いや、大丈夫だ! コレが俺の仕事だからな」 高橋に会うのは、俺たちが入籍した後、数名でお祝いパー
さすがに急が3週間も続くと、おかしい! と思い始め、翌日、俺は調査会社に勤めている友人、高橋に相談したのだ。 その友人にも、俺たちが出会ったのは、マッチングアプリだとは伝えていなかったので、まずは、それから伝えると、高橋はとても驚き、 『申し訳ないが、なら、まだマッチングをやってる可能性は高いな』と言われた。 ──やっぱり、そうか…… そして、俺は、高橋に正式に調査依頼をし、スマホのメッセージを見る方法を教えてもらった。 美衣子がお風呂に入っている時に、美衣子のスマホを見てしまったのだ。 そこには、恐ろしい文言が並んでいた。 Mという人物とのやり取り…… 〈また、夜会えるか?〉 〈うん〉 〈旦那は、大丈夫なのか?〉 〈全然大丈夫! 子どもを預けてれば、何処へも行けないだろうし、それに、あの人がたまには友達と会ってきたら? って勧めてくれたんだし〉 〈お前、ひっで〜な! それは、女友達のことだろ?〉 〈そんなの私に居ないわよ 笑〉 〈ハハッ、なら仕方ないから俺が可愛いがってやるか〉 言い表せない絶望感と悲愴感が襲ってきた。 ──まさか、美衣子が不倫…… 高橋に言われた通り、落ち着いて、それを証拠として、自分のスマホに収めた。 そして、更にスクロールして遡って確認した。 そもそも、このMという男とは、何処で知り合ったのか? マッチングアプリなのか? すると…… 〈最近、益々マーくんに似て来たよね〉 ──え? 〈だよな、イケメンだな蓮斗!〉 …… ──!! どういうことだ? まさか蓮斗は、俺の子じゃなくて、コイツの子なのか?! そんな…… 頭を鈍器で殴られたような衝撃で、身体中の血の気がサーッと引いて行くような感覚に襲われた。一気に大きなストレスがかかったのだろう。 手が震え出した。 驚きと同時に、怒りを通り越して、強い憤怒しかない! そして……その後に、信じられないぐらいの悲しみが襲いかかった。 ──蓮斗が、俺の息子じゃない……? 嘘だろう? 3年もの間、我が子として育てて来たのに…… それは、とても重要な証拠だった。 怒りと悲しみに襲われながらも、今俺がしっかりしなくては……と、 また、写真を撮ってスマホに
「ごめん、今週の土曜日、急に飲み会が入ったから、蓮斗のこと見ててもらってもいい?」 月曜日の夜、妻である美衣子が俺に言った。 「え? また? いつも急だな」 ──それに最近多く続いている 蓮斗は、俺たちの愛息子。 まだ3歳になったばかり、母親が恋しい時期なのに、美衣子は、夜な夜な出かけることが増えた。 「皆んな忙しいから、直前にしか日にちを決められないのよ」 学生時代の友達との約束のことを言っているようだ。 「にしても……」 「何? 貴方が、『たまには友達と会って来たら?』って言ってくれたんでしょ?」 たまにはとは言った。 いつも家事も育児も頑張ってくれているから、 息抜きも必要だと思ったし、『友達と会う時間も取れない!』と愚痴を溢していたから、そういう時間も大切だと思ったから……。 だけど、先週も行っていたし、なんなら先々週もだ。この3週間、毎週土曜日になると出掛けている。 「毎週じゃない?」 「だって、私には必要な時間なんだもの……」と、視線を落とし、俯きながら言われると全否定は出来ない。 美衣子は、俺(翔太)と結婚してすぐに妊娠した為、仕事も辞めて今は専業主婦だ。 毎日、家事と育児に奮闘し、ずっと家に居ると、社会から遮断されたような気持ちになると言う。 今までは、出掛けると言っても近所のスーパーへ息子の蓮斗と買い物に行く程度だったのだろう。 だから俺の休みの日には、家族で出かけるようにはしているが、美衣子はそれでも物足りないようなのだ。 万一、育児ノイローゼや鬱になられても困ると思ったので、そういう提案をしたのだ。 なのに、最近では、それがどんどんエスカレートしているように思える。 ──本当に、女友達なのか? そう疑う気持ちも出て来てしまった。 なぜなら、今までは、外に出掛けない日は、 化粧もしないですっぴんのまま、朝起きた時と同じスウェット姿のままで一日中過ごしていたようで、夜に俺が帰っても同じ格好の事が多かった。 育児疲れかと思って、大目に見ていたが、日に日に酷くなっていた。 ──こんな女だっけ? と、微塵も女の色気を感じなくなっていた。 なのに、最近では華やかな洋服に着替え、毎日綺麗に化粧もして